インフルエンザに麻黄湯と決め込む日本漢方の危うさについて


参考ブログ:風邪やインフルエンザの漢方薬:漢方薬専門・村田漢方堂薬局(山口県下関市)の近況報告

2007年12月05日

傷寒論医学の危うさについて

お便り:東海地方の漢方専門薬局経営の女性薬剤師

 本日はお忙しいのにお便りをいただき、ありがとうございました。
 本当に寒くなり、こちらは今夜は雪の気配です。
 歳とともに寒さに弱くなり、冬は苦手な季節となりましたが、唯一の喜びは、猫が、こたつがわりに一緒に寝てくれることです。

 ところでこれから3月頃まで、私にとっては最もやっかいな季節です。
 と申しますのは、過去に大きな失敗をやらかしているからです。
 2年前の11月に、その年はひどく体力が落ちていたのか、肺熱〜肺陰虚の症状で悩まされ、声も出なくなり、患者さんから”先生、どうぞお大事に!”と言われる大失態がありました。

 さらにこりもせず、今年3月、銀翹散製剤が最もよく出ていた時期なのに、自分の症状を見間違えてしまいました。

 悪寒がひどく、とにかく寒くて、いてもたってもいられないのと、頭皮や皮膚の表面がとても痛くこわばっており、舌も白く冷えていました。
 これはどう考えても麻黄湯を使わざるを得ないと思い、麻黄湯を飲んだのですが、これが効いたときのような爽快感はなく、あいかわらず寒けがたまらず、しかもどんどんと身体痛がひどく、あっという間に足腰が痛くて立てなくなりました。
 しまった!と思ったときにはすでに肺熱症状が出てきました。

 麻黄湯で温めたのが災いして、倍以上の早さで温病に入り込まれてしまったようです。

 慌てて銀翹散系の処方、積雪草、白花草など清熱剤を取り入れて治しましたが、骨がくだけるようにしんどかったことを覚えています。(骨仙人)

 インフルエンザが流行る時期は、どんなに風寒の症状があろうとも、麻黄湯関連の方剤は御法度に近く、決して単剤で用いてはならないことを肝に銘じました。

 もうひとつあります。
 10年ほど前、小学生の一人娘を危うくダメにするところでした。
 これも何の因果か麻黄湯!

 そのときも風寒の症状が強く、こんなときに子供によく麻黄湯を処方していたので使用したのですが、情報の伝達不足で、家族が市販の総合風邪薬を飲ませていたらしく、麻黄が重複してしまいました。(これは後になってわかったことです)

 しばらくすると、娘は夢遊病者のように立ち上がり、冷蔵庫から牛乳を出してきて、自分のベッドにまき始めました。”お母さん、すだれのようにキレイ〜”とニタニタと笑いながら、おかしな幻覚が見えていたようです。
 慌てて病院へ連れていったところ、”脳炎の疑い”とのことで、髄液の検査等をされ、娘にとても辛い思いをさせてしまいました。

 さいわい、翌日には娘は正気にもどり、病院では”原因不明”と言われましたが、明らかに麻黄の過量投与による幻覚と脳炎様症状であったことに気がつきました。
 とんでもない母親です。

 市販の子供用の風邪シロップなどには必ず麻黄系統の薬剤が入っており、いい加減に飲ませているお母さんも多いようです。
 インフルエンザ時の座薬などについては、注意が呼びかけられていますが、麻黄については一向ないものです。
 高熱時に麻黄を使用するのはとても注意が必要かと思います。

 長々と、とんだ恥かき話をしてしまいました。
 漢方というと、風邪には葛根湯!と安易に考えて購入される方も多いので、書かせていただきました。


お返事メール:●●先生

 冬到来の時節柄、時宜にかなった貴重なご体験のご報告、まことに ありがとうございます!!!
 是非ともブログに転載させて頂きたいのですが、ご許可頂けるでしょうか?

 ヒゲジジイ自身もとんでもない最悪の体験をしています。

http://ryukan.seesaa.net/article/16609596.html

 二十数年前とは言え、傷寒論医学の無力感を身をもって体験し、そのことが今日の中医学導入のきっかけの一つともなっていると思います。
 小生の場合は、医師の往診まで依頼する始末だったのですから悲惨でした。

 ご許可を得られましたら、早急にブログへ転載させて頂きたい、時節柄もグッド・タイミングですので、小生の上記の悲惨な体験 http://ryukan.seesaa.net/article/16609596.html も同時に併記してブログにと思っていますので・・・・。


【編集後記】 貴重な体験のお便り頂いた先生は、ヒゲジジイのメインブログ 漢方と漢方薬の質疑応答集と村田漢方堂薬局の近況報告 で時々御出場頂いている同業の漢方専門薬局経営の先生です。
【関連する記事】
posted by ヒゲジジイ at 20:13| 山口 ☁| 風邪・インフルエンザに対する漢方薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月03日

風邪や流感予防の漢方薬

 風邪の予防方法は様々だが、長年試してもらってみて最も評判がよいのが、銀翹散製剤の中でも服用量を加減しやすい錠剤の天津感冒片の少量を常用する方法である。
 特に毎回咽喉腫痛や咽喉の違和感などから始まるタイプの人達にはうってつけのようである。

 天津感冒片を1回に1錠〜2錠、多くは1錠でも十分なようだ。これを1日3回くらい、必ず就寝前にも服用しておくべきである。夜中に口を開けて寝るタイプの人には極めて有効である。

 同時に板藍茶や白花蛇舌草を併用されている人が多い。

 実際の漢方相談業務においては、もっと詳細なコツをそれぞれの体質に応じて個別的にアドバイスしている。
posted by ヒゲジジイ at 13:47| 山口 ☔| 風邪・インフルエンザに対する漢方薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月30日

銀翹散製剤の製品名は天津感冒片(てんしんかんぼうへん)や涼解楽(りょうかいらく)

 銀翹散製剤もメーカー間で精度が微妙に異なるが、当方ではイスクラの「天津感冒片」と「涼解楽」を使用している。板藍根エキスも同社の「板藍茶」が濃度が高く安上がりである。

 天津感冒片は錠剤だから、分量を加減するにはとても便利であり、涼解楽はエキス顆粒で溶解速度が速いので、重症の時や、なるべく速効を得たい時には重宝である。

 一昨日、小生自身が寒気と透明な鼻水が微量続くので、涼解楽と板藍茶・白花蛇舌草を同時に飲んで翌日には治っていた。
 咽喉腫痛もなく、僅かな寒気と軽度の咳嗽を伴っていた。

 一見、巷でささやかれる「青い風邪」のようであるか、実際には「赤い風邪」なのである。その見分けは強い悪寒はなく、僅かな寒気である。ゾクゾクする寒気ではなかったので、透明な鼻水が続いても温病系の風邪であることを類推することが出来るのである。
posted by ヒゲジジイ at 01:34| 山口 ☀| 風邪・インフルエンザに対する漢方薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月20日

風邪でも体質によっては葛根湯証が継続し続ける人もある

 現代社会では明治時代などの寒さが厳しい時代と異なって「風邪を引いたら葛根湯」というのはほとんど神話にちかく、悪寒が強いほんの初期だけに適応するだけだ、というのが本ブログの主張であったが、もちろん例外はある。悪寒・項背部の凝りなどの葛根湯証がしばらく続く人もある。

 日頃から肩こり・頭痛などの持病をかかえ、葛根湯証が日頃から持続している人達にあっても、咽喉腫痛を伴う風邪を引いた場合は、銀翹散製剤(天津感冒片など)の温病系の方剤が主体となることが多い。このことには変わりないが、一部の人では、悪寒に伴った項背部の凝りと冷え、頭痛や肩こりなどの葛根湯証が継続したまま咽喉腫痛が継続する場合もある。あるいは咽喉腫痛が消えても黄色い鼻汁を伴っているなども同様である。

 このような場合は、日本漢方では葛根湯加桔梗石膏を処方するのが通り相場だが、現実的には葛根湯を主体に銀翹散製剤を適量加えることで十分に対処出来るのである。もちろん板藍根があれば併用した方がよいのは言うまでもない。

 上記に類似した病状の人が最近、東北地方のお馴染みさんで現実に遭遇したばかりなので、敢えてここに記すのである。
 要するに、風邪やインフルエンザの傾向と対策はあるていど規定することは出来るが、実際には個人個人の体質はかなり異なるので、あくまで個別的に綿密な弁証論治に基づいて、臨機応変の対応をしなければならないのが漢方医薬学の現実でありかつ、原則である。
posted by ヒゲジジイ at 12:57| 山口 ☀| 風邪・インフルエンザに対する漢方薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月30日

葛根湯 (高村光太郎作)初出:明治44年「スバル」8月号

      葛根湯 高村光太郎

かれこれ今日も午(ひる)といふのに
何処とない家(うち)の中(うち)の暗さは眼さめず
格子戸の鈴(りん)は濡れそぼち
衣紋竹はきのふのままにて
窓の外には雨が降る、あちら向いて雨がふる
すげない心持に絶間もなく−−−
町ぢゃちらほら出水のうはさ
狸ばやしのやうなもののひびきが
耳の底をそそつて花やかな昔を語る
膝をくづして
だんまりの
銀杏返しが煎(に)る薬
ふるい、悲しい、そこはかとない雨の香(か)に
壁もなげいて息をつく
何か不思議な
何か未練な湯気の立つ
葛根湯の浮かぬ味


続きは⇒ 明治の風邪は葛根湯、平成の風邪は銀翹散製剤--------- 高村光太郎の詩⇒葛根湯
posted by ヒゲジジイ at 17:00| 山口 ☀| お茶でもどうぞ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする