感冒初期の悪寒と同時に項背部に凝りがあれば葛根湯証というのが通り相場だが、その時期を逃して寒気と同時に明らかな熱感が生じ、同時に咽喉部が怪しくなった時点では、たとえ咽喉腫痛がなくとも、多くの場合、銀翹散証に移行している。
このことは既にシバシバ述べたことであるから、今回書こうとすることは、このような感冒やインフルエンザ初期の問題ばかりでなく、慢性的な肩凝りや項背部の凝りをともなっている場合の他方剤との鑑別である。
項背部に凝りがある場合は太陽膀胱経に位置することから、葛根湯証や独活葛根湯証など以外にも桃核承気湯証や五苓散証などの場合があるが、やはり何と行っても葛根湯証や独活葛根湯証の場合が最もよくみられる。
やや特殊なケースでは桂枝去桂加茯苓白朮湯証ということもある。
また熱証では葛根黄連オウゴン湯証というケースも、それほど珍しくはない。
ところで軽度の慢性的な副鼻腔炎がある場合、項背部に明らかな凝りを伴っていることも多い。この場合、直ぐに葛根湯加川芎辛夷が適応するように見えても、実際には辛夷清肺湯証だったということが日常茶飯事である。
つまり項背部の凝りを目標にした場合、日本人の肩凝り症に最も多い独活葛根湯証ということになるが、寒熱の把握を間違えると、葛根湯や独活葛根湯で一時効果があっても次第に効力を失ってしまい、そのまま続けていると熱邪を助長する様々な不都合が生じる事だって珍しくない。
その場合の多くは辛夷清肺湯証であったわけで、方剤を切り替えると覿面、治療効果が復活して項背部の凝りは再び次第に緩解し、それに連なる諸症状も軽快することとなる。
病名的には蓄膿症関連の人ばかりでなく、しばしば高血圧患者さんの中に多いことを長年、これまで多くの人で確認してきた。
たとえばもっとも多いのが肺肝腎陰虚体質者の辛夷清肺湯に杞菊地黄丸を土台すべき高血圧患者さんが最も多かった。現在もその典型的なタイプ(
さらに釣藤散に地竜を加えている)の方がおられる。
また、
脾肺病としてのアトピー性皮膚炎皮膚炎にも、しばしば辛夷清肺湯を主軸した配合が適応することも多く、適切な弁証論治によって応用範囲は意外にはかり知れない方剤なのである。
posted by ヒゲジジイ at 14:23| 山口 ☀|
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