つまり、経絡を温める附子という生薬を用いた漢方処方を使用するのが、ほとんど基本原則に近いのが、日本古漢方派のやり方であるが、小生の薬局では、まず附子剤は使用しない。
辛熱の薬物は、肺陰を損傷しやすいので、現代社会のように豊かになり、また温暖化現象のますます顕著になる日本で、それほど必要とは思われない。
おっと、風邪やインフルエンザ専門のブログで、ちょっと場違いなことを書いてしまったが、長年リウマチを悩まれた患者さんで、もっぱら当方の漢方薬オンリーで、ほとんど改善して緩解状態が持続している婦人の葛根湯使用経験談を記そうとして、前置きが長くなってしまった。
このご婦人、長年各病院を転々とするうち、ステロイド治療でも疼痛が消えなくなり、当方の漢方薬で苦労を重ねながら、早めにステロイドは完全に廃薬することができた。
かくして、次第に改善していくうち、とても親切な開業医さんにめぐり合った。
漢方薬治療を大いに奨励して下さり、いつもこのご婦人を励まされ、血液検査と軽い高血圧治療薬の投与と、時折、風邪のために葛根湯を投与されている。
この先生のご指導がまた的確であった。
葛根湯は、風邪を引いてしまったらもう効かないから、引いたかなと思ったら直ぐに服用するように、と常に指導されていた。
従ってこの聡明なご婦人は、ゾクっと来たら直ぐに葛根湯を服用し、温かくして寝るとあくる日は治っていることが多い。
ところが、いったん引き込んでしまったら、お医者さんがおっしゃるとおりに葛根湯はまったく効かないので、小生のところで常に銀翹散製剤と板●茶を併用して治している。
葛根湯の使用方法に堪能なお医者さんがおられるとは、久しぶりに感激した。
つい、このように書いてしまうほど、病院や医院で投与される葛根湯は、すでに使用すべき時期が過ぎ去って本格的な風邪を引き込んでしまっている。
それゆえに病院に訪問しているのに、葛根湯を出されるから、もうその時点ではむしろ葛根湯は使用しないほうがいいくらいのタイミングで投与されているケースが断然多い。
だから、まったく効果がないのである。
これまでにも、同様のことを書いてきているが、その機微を良くご存知のお医者さんもおられたわけである。
ン実問題として、げ多くの病院・医院では本格的に風邪を引き込んでいる患者さんにばかり葛根湯を投与する結果になっている。
このために、患者さんたちにやっぱり漢方薬は大したことないや、という印象をもたれてしまうのである。
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