医療用漢方でもあるし、薬局専用のエキス剤も奇特なメーカーさんで製造されている。
小生の薬局では、20年前まで大活躍してきたこの方剤も、近年めっきり不要となった。
もともと、柴陥湯という合方(二つの方剤をあわせたもの)によって作られた方剤は、便利なようで不便な点もある。
風邪がこじれ、咳嗽によって胸痛が生じるような時に使用され、日本漢方独特の合方製剤である。
これが、よくフィットすることが多かったのだが、年々、小柴胡湯の温燥の薬性が不要になりはじめた。
不要というよりも、邪魔になると言った方が適切な表現である。
数年前にも、地元で漢方に造詣の深い内科医院さんが、咳嗽による胸痛に悩まされている60代の女性に、柴陥湯と辛夷清肺湯が投与された。
それが、一向に効かないのである。
これが20年前だったら、日本のあらゆる環境的な影響などにより、有効だったと思われるが、適応する方剤も、明らかにその時代時代の傾向があると思われる。
その女性は、もともと慢性疾患では当方の常連さんであったので、直ぐに相談に見えられた。
20年前だったら効いていたでしょうが、それにしてもこれを出された内科医院の先生は、かなり漢方に堪能な方ですよ。但し、柴陥湯の中の小柴胡湯が余分で、これが邪魔して効果が出ないのだから、ということで、
小陥胸湯加味方(剤盛堂の結胸散)と辛夷清肺湯の合方に、念のため板●根エキスと白●蛇●草エキス(この2つは日本では残念ながら健康食品扱いだから、あえて●を使用)を加え、これによって即効を得て回復している。
ともあれ、当方では20年前頃から徐々に柴陥湯の使用頻度が落ち、ここ十年は殆ど使用しなくなっている。
結局は、咳嗽による胸痛の場合、肺炎症状に近い状態でも、抗生物質など病院から処方されながら、一向に治りの良くない場合に、かなり細かい微調整は必要であるものの、基本的には小陥胸湯を中心にした配合で、比較的速効を得ることが出来ている。
但し、小柴胡湯の配合された柴陥湯を使用した場合、却って胸部・気管支の炎症を遷延させることすら考えられる時代となっているので、明らかに「不要」と言って良いだろうと思われるのである。
それゆえ、純粋型の小陥胸湯(半夏・瓜呂仁・黄連)のエキス製剤が望まれるのであるが、各社その意識はどうなのだろう?
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