体質は、中医学でいう陰虚体質、陰液不足を生じやすい体質で、舌苔が比較的乏しい。
それゆえ、このような滋潤作用のある方剤が適応するのである。
通常は、急性疾患に使用すると邪を留める恐れがある、といわれる地黄が配合された方剤であるが、この方にとっては問題になっていない。
風邪を引くと必ず咽喉がやられるので、この方剤を直ぐに使用すると、2日以内に治るので、ここ十年間は発熱もしたことがないと言われる。
この方は、比較的特殊なタイプであるから、明らかな陰虚体質の人でない限りは、真似しないほうがよい。
あくまで、一般的には銀翹散製剤(涼解楽や天津感冒片など)が主体であることが多い。現実的には、この養陰清肺湯にはシロップで出来た美味しい製品があるので、ヒゲ薬剤師は陰虚体質でもないのに、演説しすぎて咽喉がおかしくなると、いつもこのシロップで咽喉を潤していた。
また、急性の風邪疾患の時に補助的に利用しても、このために「邪を留める」という現象を感じたことはない。
このへんは、中医学的な理論の一部は、鵜呑みにし過ぎても意味がないこともある好例である。
ただし、原則としては、地黄剤は急性疾患に使用すると邪を留めることもある、ということも実際にあり得ることは確かなのだから、無視しろと言うわけでは決して、ない。
現実的な弁証分析によっては、邪気の性質如何、体質如何によっては急性期に地黄剤を用いることは、絶対にまずい、と言う訳ではない、と言いたいのであって、原則論だけを鵜呑みにしてその部分だけにこだわることは、却って弁証論治の法則に悖る事になる、と言いたいのだ。
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