本日はお忙しいのにお便りをいただき、ありがとうございました。
本当に寒くなり、こちらは今夜は雪の気配です。
歳とともに寒さに弱くなり、冬は苦手な季節となりましたが、唯一の喜びは、猫が、こたつがわりに一緒に寝てくれることです。
ところでこれから3月頃まで、私にとっては最もやっかいな季節です。
と申しますのは、過去に大きな失敗をやらかしているからです。
2年前の11月に、その年はひどく体力が落ちていたのか、肺熱〜肺陰虚の症状で悩まされ、声も出なくなり、患者さんから”先生、どうぞお大事に!”と言われる大失態がありました。
さらにこりもせず、今年3月、銀翹散製剤が最もよく出ていた時期なのに、自分の症状を見間違えてしまいました。
悪寒がひどく、とにかく寒くて、いてもたってもいられないのと、頭皮や皮膚の表面がとても痛くこわばっており、舌も白く冷えていました。
これはどう考えても麻黄湯を使わざるを得ないと思い、麻黄湯を飲んだのですが、これが効いたときのような爽快感はなく、あいかわらず寒けがたまらず、しかもどんどんと身体痛がひどく、あっという間に足腰が痛くて立てなくなりました。
しまった!と思ったときにはすでに肺熱症状が出てきました。
麻黄湯で温めたのが災いして、倍以上の早さで温病に入り込まれてしまったようです。
慌てて銀翹散系の処方、積雪草、白花草など清熱剤を取り入れて治しましたが、骨がくだけるようにしんどかったことを覚えています。(骨仙人)
インフルエンザが流行る時期は、どんなに風寒の症状があろうとも、麻黄湯関連の方剤は御法度に近く、決して単剤で用いてはならないことを肝に銘じました。
もうひとつあります。
10年ほど前、小学生の一人娘を危うくダメにするところでした。
これも何の因果か麻黄湯!
そのときも風寒の症状が強く、こんなときに子供によく麻黄湯を処方していたので使用したのですが、情報の伝達不足で、家族が市販の総合風邪薬を飲ませていたらしく、麻黄が重複してしまいました。(これは後になってわかったことです)
しばらくすると、娘は夢遊病者のように立ち上がり、冷蔵庫から牛乳を出してきて、自分のベッドにまき始めました。”お母さん、すだれのようにキレイ〜”とニタニタと笑いながら、おかしな幻覚が見えていたようです。
慌てて病院へ連れていったところ、”脳炎の疑い”とのことで、髄液の検査等をされ、娘にとても辛い思いをさせてしまいました。
さいわい、翌日には娘は正気にもどり、病院では”原因不明”と言われましたが、明らかに麻黄の過量投与による幻覚と脳炎様症状であったことに気がつきました。
とんでもない母親です。
市販の子供用の風邪シロップなどには必ず麻黄系統の薬剤が入っており、いい加減に飲ませているお母さんも多いようです。
インフルエンザ時の座薬などについては、注意が呼びかけられていますが、麻黄については一向ないものです。
高熱時に麻黄を使用するのはとても注意が必要かと思います。
長々と、とんだ恥かき話をしてしまいました。
漢方というと、風邪には葛根湯!と安易に考えて購入される方も多いので、書かせていただきました。
お返事メール:●●先生
冬到来の時節柄、時宜にかなった貴重なご体験のご報告、まことに ありがとうございます!!!
是非ともブログに転載させて頂きたいのですが、ご許可頂けるでしょうか?
ヒゲジジイ自身もとんでもない最悪の体験をしています。
http://ryukan.seesaa.net/article/16609596.html
二十数年前とは言え、傷寒論医学の無力感を身をもって体験し、そのことが今日の中医学導入のきっかけの一つともなっていると思います。
小生の場合は、医師の往診まで依頼する始末だったのですから悲惨でした。
ご許可を得られましたら、早急にブログへ転載させて頂きたい、時節柄もグッド・タイミングですので、小生の上記の悲惨な体験 http://ryukan.seesaa.net/article/16609596.html も同時に併記してブログにと思っていますので・・・・。
【編集後記】 貴重な体験のお便り頂いた先生は、ヒゲジジイのメインブログ 漢方と漢方薬の質疑応答集と村田漢方堂薬局の近況報告 で時々御出場頂いている同業の漢方専門薬局経営の先生です。
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