葛根湯 高村光太郎
かれこれ今日も午(ひる)といふのに
何処とない家(うち)の中(うち)の暗さは眼さめず
格子戸の鈴(りん)は濡れそぼち
衣紋竹はきのふのままにて
窓の外には雨が降る、あちら向いて雨がふる
すげない心持に絶間もなく−−−
町ぢゃちらほら出水のうはさ
狸ばやしのやうなもののひびきが
耳の底をそそつて花やかな昔を語る
膝をくづして
だんまりの
銀杏返しが煎(に)る薬
ふるい、悲しい、そこはかとない雨の香(か)に
壁もなげいて息をつく
何か不思議な
何か未練な湯気の立つ
葛根湯の浮かぬ味
続きは⇒ 明治の風邪は葛根湯、平成の風邪は銀翹散製剤--------- 高村光太郎の詩⇒葛根湯

