インフルエンザに麻黄湯と決め込む日本漢方の危うさについて


参考ブログ:風邪やインフルエンザの漢方薬:漢方薬専門・村田漢方堂薬局(山口県下関市)の近況報告

2007年02月03日

風邪が治った後に生じる頑固な後鼻漏にも様々なタイプがある

 風邪やインフルエンザが治ったあとの後遺症として、急性期に副鼻腔炎を併発し、その後遺症として後鼻漏が持病となってしまう人もかなり多い。
 病院治療でもなかなか治らずに漢方治療を求めて来局する方が以前からとても多く、副鼻腔炎を伴う後鼻漏の場合が最も多い。
 多くは黄色の鼻汁と黄色の後鼻漏であるから中医学的には肺熱を伴っていることは明らかだから、辛夷清肺湯を主方として適切な方剤を併用することで、たとえ根治は無理でも8割程度の緩解は得られるものである。(真の意味での根治といえる段階まで継続服用する人は比較的少ないからである。

 同じ後鼻漏でも西洋医学的な耳鼻咽喉科における診断では副鼻腔炎が確認されず、軽度の鼻炎程度の診断でありながら、頑固な後鼻漏に悩まれて様々な治療を試みても一向に治らずに困惑されて漢方治療を求めて来られる方もおられる。
 原因が副鼻腔炎ではないから簡単に治るかと言えば、意外にそうでもなく、後鼻漏の性質が粘った痰状を呈して西洋医学治療はもとより、漢方治療も一筋縄では行かない面がある。

 ところが、先日扱った例では、同じ後鼻漏でも水様の後鼻漏で、一年前の風邪の後遺症として頑固に続き、その後鼻漏の刺激で咽喉がしばしばいがらっぽく痛くなる。
 カッコウショウキサンと銀翹散製剤の併用一週間で殆んど後鼻漏は止まった。同じ後鼻漏でも粘度の高い痰状の後鼻漏ではなく、水溶性の後鼻漏であるからカッコウショウキサンのような乾燥剤で簡単に反応してくれたわけだが、重濁粘膩な後鼻漏の場合、原因が蓄膿症ではないだけに、温胆湯やハンゲビャクジュツテンマトウ、カッコウショウキサンなどを中心に、痰証を改善する方剤を様々に工夫しなければ、一筋縄では解決出来そうもない。

 現在進行形で副鼻腔炎が原因の後鼻漏の人にはのろのろながらも比較的順調な人ばかりだが、副鼻腔炎ではない鼻づまりの全く伴わない後鼻漏の人達が三名おられる中で、速効が得られたのは先に述べた水様の後鼻漏の人のみであり、粘稠な後鼻漏で捉えどころのない二名うちのお一人は、4ヶ月目を過ぎたところで、とうとう愛想をつかされたか音信が途絶えてしまった。
 ほんの一時的には3〜5割改善したかに見えたこともあったが、4ヶ月経過した頃の最後の通信では、結局は1〜2割の改善しか得られなかった(これでもお世辞が含まれているのかもしれない)ということであった。
 東北からワザワザ来られた人であったが、綿密な報告が次第に途絶えがちになり、他の人のように臨機応変の中医漢方薬学特有の小細工が出来なかった歯がゆさがあるものの、病歴が一年以内という短さを考えれば、当方の敗北として慙愧の念に耐えない。

 ところで、同じ頑固な後鼻漏の方がもう一人おられ、こちらは十数年以上の病歴で、これまで受けた治療で一度も効果があったタメシが全くないといわれる人で、後鼻漏に付随する不快な症状も極め付きである。
 現在二ヶ月目となっているが、少なくとも今のところ綿密詳細な報告が得られているので、根気が続いてくれる限りは、遅かれ早かれピントが合って来るに違いない。

 それにしても同じ後鼻漏であっても、原因疾患と体質によって様々に異なるのだから・・・・・一週間前にカッコウショウキサンと銀翹散製剤で、緩急ありながらも八ヶ月続いた後鼻漏も水溶性であったがゆえに一発で止めることができたのだが・・・

【2月24日の追記】 上記の水様性の後鼻漏の人は、前後10日分のカッコウショウキサンでほぼ完璧に消失して以後二週間経つが、廃薬後も今のところ再発は見られないという。何せ、水溶性の分泌物(後鼻漏)を止めるのは比較的容易なものである。
 まだ咽喉の違和感が残っているので、銀翹散製剤の微量を継続中で、この咽喉部の炎症の原因が逆流性食道炎かもしれないと外科医の指摘があり、逆流性食道炎によく効く「オルスビー」のブログの記事、
http://murata-kanpo.seesaa.net/article/33761244.html
を御覧になって、本日三度めの来局があったばかりである。
posted by ヒゲジジイ at 15:59| 山口 ☁| 風邪やインフルエンザの後遺症 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする