インフルエンザに麻黄湯と決め込む日本漢方の危うさについて


参考ブログ:風邪やインフルエンザの漢方薬:漢方薬専門・村田漢方堂薬局(山口県下関市)の近況報告

2006年02月22日

現代の風邪・インフルエンザの一般的傾向

傷寒論における太陽病の方剤、桂枝湯や葛根湯あるいは麻黄湯を「表熱証」と呼ぶ日本漢方は、明らかに論理的にひどい矛盾を犯している。

悪寒を主体とする太陽病に表熱なんてあるはずがない。

以前これらを「表仮寒証」と表現された高名な先生もおられたが・・・・・・

やはり、正確には風寒表証であり、上記の表現法に合わせれば「表寒証」でなければならない。
そうでなければ中医学的のみならず漢方医学的にも論理の整合性に欠けるのである。


と、今回は、このような日本漢方の明らかな間違いを指摘するための投稿ではない。

現代の風邪やインフルエンザの傾向として、あくまで多くの場合という意味では、多かれ少なかれ咽喉の違和感からひどい疼痛まで、なんらかの咽喉の異常を伴う風邪やインフルエンザが多く、また、多くの人に潜在する慢性副鼻腔炎の急性化を誘発しやすいことも配慮する必要がある。

まずは、風邪あるいはインフルエンザの引き始めであるが、多くは悪寒、つまり「さむけ」、ぞくぞくする寒気からはじまるので、首の真裏が凝れば「葛根湯」、関節フシブシの疼痛を伴えば「麻黄湯」とするのが一般的な日本漢方で、さらにバリエーションとして「桂枝麻黄各半湯」や、寒気が強烈で頭が寒い「麻黄細辛附子」などが考えられるのが日本漢方の特徴である。(決して特長とは言えない!

ところが、小生の薬局ではこれまで十数年以上、次のように考えて、多くは主方剤を銀翹散製剤を用いることで、殆どの場合にスムーズに治癒している。

強い悪寒も早晩、おのずと取れて、熱感に微悪寒を伴う状態に移行するのは目に見えているので、風邪やウイルスに感染した理由は、一時的な「虚に乗じて邪(ウイルス)に侵入された」のだから、初期の悪寒症状と一時的な虚証に対して「参蘇飲」、これに「銀翹散製剤」の併用という方法で、過去、多くの人に喜ばれてきた。
すなわちよく治った。
但し、悪寒が8割がた取れた時点で、必ず「参蘇飲」だけは中止する約束だった。

ところが、もともと虚証傾向のある人や、いわゆる胃弱傾向の人は、悪寒が取れても「参蘇飲」を中止するのは不都合であるという方も何人かおられた。

また、最初に悪寒が強かろうが、「参蘇飲」を完全に省略して「銀翹散製剤」主体でスムーズに治ってしまう方も続出した。

最初の傷寒・太陽病の葛根湯や麻黄湯は「表熱証」か「表寒証」かという次元の問題など埒外の配合となっていることに注目して欲しい。

つまり、傷寒論医学の「六経弁証」だけが急性疾患の分析方法および治療方法ではないということである。

葉天士の創立した「衛気営血弁証」のみならず、これを発展させて書かれた呉鞠通の『温病条弁』

温病は口鼻より入る。鼻気は肺に通じ、口気は胃に通ず・・・・・」の「三焦弁証」など、清代に入って急速に発達した豊富な温病学説が存在するのである。

これらの理論を無視し続ける現代の日本漢方のあり方には大いに疑問を呈さざるを得ないところである。

ところで、そうは言っても昨年末、急性耳下腺炎に罹った30代の女性には、項背部の凝りとともに悪寒が強烈だったので、銀翹散製剤とともに1日だけ葛根湯を併用しもらったが、明くる日には潜在していた副鼻腔炎が、強い熱感と黄汁を伴って出現してきたので、葛根湯は直ぐに中止するように注意を与え、引き続き銀翹散を主方に、辛夷清肺湯の併用に切り替えてスムーズに治癒している。

とは言え、多くの場合、傷寒と誰でもが判断しそうな風邪・インフルエンザであっても、特別な体質でもない限りは、多くは早晩、悪寒が8割去って熱感を伴うようになるのが通常であるから、初期に敢えて葛根湯や麻黄湯を使用する必要がないことも断然多いということである。

むしろ、熱感や咽喉腫痛を伴う症候こそが主証であるから、風熱の表証、つまり「表熱証」に適応する温病系の銀翹散製剤でスムーズに治癒しているのが現実である、ということなのである。
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posted by ヒゲジジイ at 14:53| 山口 ☁| 風邪・インフルエンザに対する漢方薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする