このときには鼻には辛夷清肺湯を使用して楽にはなるが、咽喉腫痛には、甘草湯を使用したり、排膿散及湯を用いたりするが、結局はこの段階になると漢方薬ではお手上げになって、病院で抗生物質をもらって治るというパターンを繰り返している、といわれる。
日本漢方のやり方だけで対処するために、このような繰り返しになるのだから、今後は必ず銀翹散製剤を早めに使用するようにアドバイスする。
咽喉腫痛や鼻に熱感が生じ始める手前で、銀翹散製剤と辛夷清肺湯を併用すべきで、初期に使用する小青竜湯は明らかに有効であっても、半分くらい軽快したところで、次の段階の咽喉腫痛を警戒して連用すべきではないのに、そのまま続けてしまうから、鼻の熱感と咽喉腫痛という熱証を余計に生じるのである。
それでなくとも、傷寒ではじまったつもりが直ぐに温病に移行するケースはざらにみられる現象なのであるから、小青竜湯証にみえても、使用すべきではない可能性も高いのである。
小青竜湯の温燥の性質は強烈であるから、透明な鼻水が肺寒停飲以外の原因から生じている場合であっても、その大量の鼻水という現象にだけは強烈に効く場合がある。
だから小青竜湯証だと錯覚を起こしていることもあれば、やはりほんの一時的に小青竜湯証のこともある。
いずれにしても、これまで、類似したパターンを繰り返しているのだから、小青竜湯に頼るのはほどほどにすべきことをアドバイスしておいたわけである。
この方の場合の問題点を要約すれば、温燥の小青竜湯を続けたために鼻と咽喉を乾燥させすぎてしまい、副鼻腔炎を誘発して細菌を含んだ鼻の膿汁が咽喉部に落ちて付着して、ますます咽喉腫痛による炎症と発熱を生じるという悪循環を繰り返していることが考えられるのであった。
従来の日本流の漢方ばかりに頼っていると、漢方メーカーさんの社員ですら上記の悪循環を繰り返すのである。
他のメーカーさんの社員さんたちでも、自社でも銀翹散製剤を販売しているのに、どうしても古漢方派漢方にこだわるらしく、麻黄湯や葛根湯、桂枝麻黄各半湯などといった傷寒論医学の方剤ばかりを使用して、なかなか治らずに病院のお世話になることも多い現実には、ちょっと呆れるほどである。
小生が、そのことを指摘して強く言うものだから、よけいに彼らは意地になって古方派漢方にこだわるのか?
強く言えば言うほど銀翹散製剤を使いたくなくなるのだろうねきっと、という笑い話が定着しているほどである。

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