それで思い出したことだが、風邪を引きやすくて一年に何度も高熱を発するタイプに、慢性副鼻腔炎が原因と思われるケースが、考えて見れば断然多いことに気がついた。
このようなブログを始めたお陰で、間違いないことを確認できた。
たとえば、昨日のご相談こそ典型的なケースで、最初から蓄膿症の悩みをおっしゃるから、話は早いのだが、中には蓄膿症が持病であることをこちらから質問するまで言われず、たとえ質問しても軽く受け流して、「少し悪かったことがあります」くらいで、ご本人自身にあまり認識がないことすらあった。
ともあれ、蓄膿というくらいだから当然、細菌性の濃汁が、知らずしらずに常に後鼻漏として咽喉に流れ落ち、疲れたりして免疫低下気味となった折に風邪症状を引き起こすという予測がなりたつのが、これら慢性副鼻腔炎をかかえる患者さんたちである。
慢性副鼻腔炎は、蓄膿症とも呼ばれるように、単なる鼻炎などとは異なり、黄色の濃汁を多かれ少なかれ排出することから、多くは熱証なのである。
だから、蓄膿症にも効くとされる「葛根湯加川キュウ辛夷(かっこんとおうかせんきゅうしんい)」などという漢方薬方剤は、蓄膿症患者さんたちにとって、この方剤の単独使用というのは、殆どの場合、適切ではないということなのである。
つまり、葛根湯加川キュウ辛夷に記載される効能「鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎」とあるうちの真ん中、蓄膿症に対する効能は、単独で使用する限りは、理屈に合わない。
温性の本方剤は、蓄膿症には不適切な可能性が高い、というケースが多いのである。
長年観察するに、蓄膿症の多くは熱証である。
だから、基本方剤は、一般的には「辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)」が主軸となる。
ということで、もとの風邪の話に戻ると、蓄膿症患者さんが風邪を引くと大変である。
最初に寒気が強くとも、そのうち熱感が強くなって、寒気が軽くなる頃には、鼻詰まりと濃汁の蓄積で苦しむ。
咽喉は痛み、ひどい時は咳嗽を併発して、気管支の奥から刺激を感じて、急性気管支炎を併発する。
以上の症候群は、すべて中医学的手法を用いる限り、漢方薬の得意分野である。
昨日見えられた方は、合いもしない医療用漢方の、葛根湯や葛根湯加川キュウ辛夷、さらには少柴胡湯まで出されて、温性の漢方処方のオンパレードである。
ひどくなることはあっても、治るはずがない。
いつも漢方薬は効いたと思ったことはないが、最終的に抗生物質を連用することで、ようやく回復するのが常であるという。
しかしながら、平素から、鼻づまりと咽喉刺激感は常時完治はしない。
体質改善の配合方剤の主軸は、辛夷清肺湯に適量の銀翹散製剤を加え、さらに中国では「中草薬」と呼ばれる適切なものを加味して連用してもらうことになる。
急性の風邪症状が勃発すれば、急性用の配合比率に変えるまでのことだ。
つまり、銀翹散製剤を主軸に辛夷清肺湯を最初から加えておいたほうがよく、悪寒が強烈な場合のみ、ほんの一時的に葛根湯あるいは麻黄湯を併用してもよいが、寒気が7割取れた時点では、これら温性の方剤は中止しなければならない。
以上、専門家が読めばすべて理解されるはずである。
意外に眼からウロコという先生もおられるといわれるが、日本漢方だけでは風邪や流感、インフルエンザは治せない、ということを認識して欲しいと思う。
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