常連さんの中年後期の男性が、水様の鼻水が目立つ風邪を引いた。
まだ咽喉は痛くない。
いつもの風邪は、銀翹散製剤と参蘇飲エキスに補助として板●根エキスで良いのだが、今回は水様性の鼻水が目立つので、参蘇飲のかわりにカッコウショウキサンである。
以前にも、この方自身がこのパターンの経験があるから、配合方剤の選定は早い。
鼻水以外の明らかな症状はまだ出現していないので、カッコウショウキサンを主軸に、銀翹散製剤は少量にしておく。
もしも咽喉腫痛が出現したら、すかさず銀翹散製剤を規定量まで増量することは、常連さんなら先刻御承知のことである。
この方は、もともと心疾患があるので、麻黄(マオウ)が含まれた小青竜湯などは禁忌である。
たとえ心疾患がなくとも、小生の薬局では明らかな喘息などを伴わない限りは小青竜湯は使用せずに、まずカッコウショウキサンで様子をみる。
両者とも乾燥性の強い方剤だが、カッコウショウキサンは胃障害を誘発することはなく、むしろ食欲増進に働く。
一方、小青竜湯は胃障害を誘発する恐れがあるのみならず、心疾患や高血圧の持病がある方にはほとんど禁忌であろう。
ある種の喘息患者さんには、小青竜湯でなければ困る、これが一番ピッタリで小青竜湯で救われたという方も少数おられるが、あきらかな小青竜湯証と確信が持てない限りは、迂闊に使用すべきではないと愚考するものである。
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