インフルエンザに麻黄湯と決め込む日本漢方の危うさについて


参考ブログ:風邪やインフルエンザの漢方薬:漢方薬専門・村田漢方堂薬局(山口県下関市)の近況報告

2007年12月08日

新聞記事「インフルエンザに麻黄湯が副作用もなくタミフルなみにきく」というのは本当か?

性別 : 女性
年齢 : 40歳〜49歳
簡単なご住所 : 近畿地方
ご意見やご質問をどうぞ : 先日新聞でインフルエンザに麻黄湯が副作用もなくタミフルなみにきく、と読みましたのでいろいろ検索していて、こちらのHPにきました。
 ところが、こちらではインフルエンザ時期に麻黄湯を飲むのはだめとのこと。

 実は数年前から天津感冒片、ばんらん茶は常備しており、引き始めは葛根湯、熱がでたら天津感冒片を服用し、まずまず風邪は撃退できてはいるのですが、今年は受験生がおりますので、新聞記事のようにインフルエンザが2日で麻黄湯で熱が下がったとみますと悩むところです。

 麻黄湯と天津感冒片を同時に飲む、というのはアリなのでしょうか。私が購入している薬局では葛根湯と天津感冒片を同時はokといわれたのですが。

 それと予防には天津感冒片を一個×3回とありますが子供だったら寝る前に一個でも効果はありますか?長々とすみません。回答いただけると助かります。

お返事メール:風邪を引くと必ずノドをやられるタイプの人では、予防には天津感冒片を1錠齧るようにしてマズイ味を咽喉に染ますように飲み込むと効果的です。一日3〜4回、板藍茶とともに服用することです。大人も子供も同様です。シバシバ罹る大人では2錠使用することもあり得ます。

 ところで実際にインフルエンザに罹ったときですが、それを新聞に出ているように麻黄湯だけに限定してしまうのは無謀です。
 そもそも漢方薬は急性疾患であっても、その人の体質と病状に合わせて処方されなくてはなりません。

 当然、体質によっては麻黄湯や大青竜湯という麻黄(エフェドリンの製剤原料)の配合された処方が適応する人もあり得ることでしょう。
 といっても、現実には果たしてどうかと言えば、皆が皆、麻黄湯が合うとは限らず、体質と病状によっては逆効果となり、副作用が出てしまう人もあり得るのです。

 ですから、インフルエンザの漢方薬は麻黄湯だと決め込むような幼稚な考えの専門家にはかからず、真の漢方薬に習熟した専門家に直接ご相談して適切な処方を得るべきです。
 その人の体質も病状も分からない段階から、急性時の処方をあらかじめ麻黄湯と限定するのは、あまりにも無謀です。

 咽喉腫痛を伴う風邪であれインフルエンザであれ、多くは天津感冒片や涼解楽などの銀翹散製剤を主体に使用するのが、中医学では常識ですが、諸条件によって併用する漢方薬も異なります。
 購入されている薬局さんを信頼して、直接指導を仰ぐのが無難かもしれません。

【編集後記】 参考文献:2007年04月05日 タミフルの使用を控え、かわりに麻黄湯が注目されているといわれるが・・・

posted by ヒゲジジイ at 01:52| 山口 ☁| 風邪・インフルエンザに対する漢方薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月05日

傷寒論医学の危うさについて

お便り:東海地方の漢方専門薬局経営の女性薬剤師

 本日はお忙しいのにお便りをいただき、ありがとうございました。
 本当に寒くなり、こちらは今夜は雪の気配です。
 歳とともに寒さに弱くなり、冬は苦手な季節となりましたが、唯一の喜びは、猫が、こたつがわりに一緒に寝てくれることです。

 ところでこれから3月頃まで、私にとっては最もやっかいな季節です。
 と申しますのは、過去に大きな失敗をやらかしているからです。
 2年前の11月に、その年はひどく体力が落ちていたのか、肺熱〜肺陰虚の症状で悩まされ、声も出なくなり、患者さんから”先生、どうぞお大事に!”と言われる大失態がありました。

 さらにこりもせず、今年3月、銀翹散製剤が最もよく出ていた時期なのに、自分の症状を見間違えてしまいました。

 悪寒がひどく、とにかく寒くて、いてもたってもいられないのと、頭皮や皮膚の表面がとても痛くこわばっており、舌も白く冷えていました。
 これはどう考えても麻黄湯を使わざるを得ないと思い、麻黄湯を飲んだのですが、これが効いたときのような爽快感はなく、あいかわらず寒けがたまらず、しかもどんどんと身体痛がひどく、あっという間に足腰が痛くて立てなくなりました。
 しまった!と思ったときにはすでに肺熱症状が出てきました。

 麻黄湯で温めたのが災いして、倍以上の早さで温病に入り込まれてしまったようです。

 慌てて銀翹散系の処方、積雪草、白花草など清熱剤を取り入れて治しましたが、骨がくだけるようにしんどかったことを覚えています。(骨仙人)

 インフルエンザが流行る時期は、どんなに風寒の症状があろうとも、麻黄湯関連の方剤は御法度に近く、決して単剤で用いてはならないことを肝に銘じました。

 もうひとつあります。
 10年ほど前、小学生の一人娘を危うくダメにするところでした。
 これも何の因果か麻黄湯!

 そのときも風寒の症状が強く、こんなときに子供によく麻黄湯を処方していたので使用したのですが、情報の伝達不足で、家族が市販の総合風邪薬を飲ませていたらしく、麻黄が重複してしまいました。(これは後になってわかったことです)

 しばらくすると、娘は夢遊病者のように立ち上がり、冷蔵庫から牛乳を出してきて、自分のベッドにまき始めました。”お母さん、すだれのようにキレイ〜”とニタニタと笑いながら、おかしな幻覚が見えていたようです。
 慌てて病院へ連れていったところ、”脳炎の疑い”とのことで、髄液の検査等をされ、娘にとても辛い思いをさせてしまいました。

 さいわい、翌日には娘は正気にもどり、病院では”原因不明”と言われましたが、明らかに麻黄の過量投与による幻覚と脳炎様症状であったことに気がつきました。
 とんでもない母親です。

 市販の子供用の風邪シロップなどには必ず麻黄系統の薬剤が入っており、いい加減に飲ませているお母さんも多いようです。
 インフルエンザ時の座薬などについては、注意が呼びかけられていますが、麻黄については一向ないものです。
 高熱時に麻黄を使用するのはとても注意が必要かと思います。

 長々と、とんだ恥かき話をしてしまいました。
 漢方というと、風邪には葛根湯!と安易に考えて購入される方も多いので、書かせていただきました。


お返事メール:●●先生

 冬到来の時節柄、時宜にかなった貴重なご体験のご報告、まことに ありがとうございます!!!
 是非ともブログに転載させて頂きたいのですが、ご許可頂けるでしょうか?

 ヒゲジジイ自身もとんでもない最悪の体験をしています。

http://ryukan.seesaa.net/article/16609596.html

 二十数年前とは言え、傷寒論医学の無力感を身をもって体験し、そのことが今日の中医学導入のきっかけの一つともなっていると思います。
 小生の場合は、医師の往診まで依頼する始末だったのですから悲惨でした。

 ご許可を得られましたら、早急にブログへ転載させて頂きたい、時節柄もグッド・タイミングですので、小生の上記の悲惨な体験 http://ryukan.seesaa.net/article/16609596.html も同時に併記してブログにと思っていますので・・・・。


【編集後記】 貴重な体験のお便り頂いた先生は、ヒゲジジイのメインブログ 漢方と漢方薬の質疑応答集と村田漢方堂薬局の近況報告 で時々御出場頂いている同業の漢方専門薬局経営の先生です。
posted by ヒゲジジイ at 20:13| 山口 ☁| 風邪・インフルエンザに対する漢方薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月03日

風邪や流感予防の漢方薬

 風邪の予防方法は様々だが、長年試してもらってみて最も評判がよいのが、銀翹散製剤の中でも服用量を加減しやすい錠剤の天津感冒片の少量を常用する方法である。
 特に毎回咽喉腫痛や咽喉の違和感などから始まるタイプの人達にはうってつけのようである。

 天津感冒片を1回に1錠〜2錠、多くは1錠でも十分なようだ。これを1日3回くらい、必ず就寝前にも服用しておくべきである。夜中に口を開けて寝るタイプの人には極めて有効である。

 同時に板藍茶や白花蛇舌草を併用されている人が多い。

 実際の漢方相談業務においては、もっと詳細なコツをそれぞれの体質に応じて個別的にアドバイスしている。
posted by ヒゲジジイ at 13:47| 山口 ☔| 風邪・インフルエンザに対する漢方薬 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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